奇談
1:小林◆YAKUMOZcw. 08/04(月) 15:16 XRRvBaIb0AA
【出版依頼】
【著者】ラフカディオ・ハーン
【翻訳編集】小林幸治
【予定価格】100円

小泉八雲の「怪談」に収録されていない、霊的な話や不思議な話を収録して
電子書籍にします。

話の画像はいつでも募集してます。謝礼はカラー2000円、モノクロ1000円、
著作権は絵師に残り、私に利用権を与え、著作権者は他所で利用しても良い
という方向です。

2015/03/09修正と追記
内容を追加した改訂版の無料アップデートはKindleの規約上不可能であると分かりました
14話程度で1冊作り3巻の電子書籍にする予定です
最後に全話まとめて1冊作り、計4冊にしようかと思います
207:鏡の乙女6◆YAKUMOZcw. 12/12(水) 21:36 3KHt9fPn0 [sage]AA


[1]ベンガラの一種で、今は唇に色を付けるためだけに使われる。
[2]珍しくはあるが、この名前はまだ使われている。
[3]斉名天皇はAD655年から662年まで統治し、嵯峨天皇は810年から842年─
─百済は日本史の初期にしばしば記載されるコリア南西部の古代王国──『内親王』
は皇家の血筋。古代の朝廷の女性には二十五の階級、つまり身分があった──『内
親王』のそれは7番目の位である。
[4]何世紀もの間、皇后と宮中の女官は藤原氏から選ばれた──保元と呼ばれる期
間は1156年から1159年まで続き、言及されているのは平と源一族の間の有名な
戦である。
[5]古い時代の信仰では、あらゆる湖や泉が目に見えない守護者を持ち、時には大蛇
や竜の姿をとると考えられた。湖や池の精霊は一般に『池の主』湖の主と言われた。
ここでは井戸に住む竜に「主」の称号が与えられていると分かるが、真実の井戸の守
護者は水神という神である。
208:小林◆YAKUMOZcw. 12/12(水) 21:41 3KHt9fPn0 [sage]AA
THE ROMANCE OF THE MILKY WAY AND OTHER STUDIES & STORIES
(天の川縁起その他)よりTThe Mirror Maidenでした。

いや〜久しぶりの追加です。翻訳が終わったのがあと2話あります。
ただ電子書籍にするには、少し長い話をもう1話翻訳する必要が有ったりと
まだまだ色々とやる事があります。
またボチボチとやっていきます。
209:弘法大師の書1◆YAKUMOZcw. 04/08(木) 23:32 XHiqwpwH0AA
弘法大師の書



 弘法大師は仏教の僧侶の最高の聖者にして──友人アキラの宗派──
真言宗の開祖であり、最初に平仮名という書法とイロハの文字表で日本人
に書き方を教え、かつ弘法大師は自身が数多の書家の中で最も素晴らしく、
法学者の間では最も巧みな魔術師であった。
 弘法大師一代記という本では、チャイナに居た頃皇帝の宮殿のとある部屋
に書かれた名前が時を経て消えたため、皇帝が使いをやって彼に名前を書
き直すよう命じたと語られている。そこで直ちに弘法大師は右手に筆を、左手
にも筆を、左足の指の間にも筆を1本、右の足の指の間にも別のを、口にも
1本とって、この5本の筆を巧みに握り壁に文字を描いた。そしてその文字は、
それまでチャイナで見られたどんな物よりも──川の流れが作るさざ波のよ
うになだらかで──美しかった。それから弘法大師は筆をとり遠くから壁に向
かって墨のしずくを跳ねかけると、そのしずくは回転し変形して美しい文字の
中に落ちた。そして皇帝は弘法大師に5本の筆で書く僧侶を意味する、五筆
和尚の名を与えた。
 別の時、聖者が京都に近い高和山に住んでいる間、天皇は金剛乗寺と呼
ばれる立派な寺のため弘法大師に額に書をしたためて欲しくてたまらなくなり、
使いの者に額を持たせ弘法大師のもとへ運びそれに弘法大師の文字を描い
てもらうよう命じた。しかし天皇の使者が額を背負って弘法大師の住む所の
近くまで来た時、前に在る川が雨のために大変増水しており誰も渡れそうに
ないと気が付いた。しかしながら、しばらくすると弘法大師が向こう岸に姿を
見せ使者から天皇が望んでいることを聞かされると、額を頭上にかかげるよう
呼び掛けた。使者はそのようにし、弘法大師が向こう岸の所から筆で文字を
描くように動くと、その動作と同じ速さで使者が掲げる額の上に現れた。
210:弘法大師の書2◆YAKUMOZcw. 04/08(木) 23:35 XHiqwpwH0 [sage]AA


 さて、弘法大師はその頃独り川辺で瞑想をする習慣があり、ある日そうして
瞑想をしている時、前に立って不思議そうに見つめる男の子に気が付いた。
子供の身なりは貧乏人が着る衣装であったが、その顔は美しかった。弘法大
師が訝《いぶか》るうちに男の子が訊ねた「人呼んで『五筆和尚』──瞬く間に
5本の筆で字を書くお坊様──の弘法大師はあなたか。」弘法大師が「私で
す。」と答えると子供は言った「ならば空に描いて下さい、お願いします。」弘法
大師は立ち上がり筆をとって空に向かい書くような所作をすると、まもなく空の
面《おもて》に極めて美しく描かれた文字が浮かび上がった。すると男の子が
「さて、わしもやってみよう。」と言って弘法大師がしたように空へ書いた。そして
再び弘法大師に言った「願わくば、わしの為に書いていただきたい──川の面
にお書きください。」それから弘法大師が水を讃える詩を水の上に書くと、それ
は落ち葉のようにまったく美しく流れの上にしばらくの間留まったが、やがて流
れに運ばれ漂い去った。「ではわしもやってみよう。」と男の子は言って、水の
上に龍の文字を書いた──『龍』の文字は草書「草文字」の様式で書かれ、そ
の文字は動かず水面に浮かんで残った。しかしその男の子が点を文字に属す
る小さな点を側に置かなかったのを弘法大師はは見た。そして訊ねた「どうして
点を置かなかったのかな。」「ああ忘れてた。」男の子は返し「どうかわしの為に
そこへ書いてください。」そうして弘法大師は点を打った。すると、何と、龍の文
字は本物の龍になって、龍は水しぶきの中を激しく動き空は雷雲と稲光を伴っ
て暗くなり、渦巻く暴風雨の中龍は天に昇っていった。
 それから弘法大師は訊ねた「あなたは何者ですか。」男の子が答える「人々が
五台山に崇拝する者、智恵の司──文殊菩薩──が私です。」話している間に
男の子の姿は変わり、その美貌は神々しく輝き、四肢は光を放ち周囲《あたり》を
柔らかな光で包んだ。そして微笑みながら天に昇り雲の彼方へ消えた。
211:弘法大師の書3◆YAKUMOZcw. 04/08(木) 23:38 XHiqwpwH0 [sage]AA
 さて、弘法大師はその頃独り川辺で瞑想をする習慣があり、ある日そうして


 しかし弘法大師自身かつて天皇が住まう御所の門、大手門の名前を描いた
額の大の文字の側に点を書き忘れたことが有る。そして京都の天皇がどうして
文字の側に点を打たなかったのか訊ねると弘法大師は答えた「忘れていました
が、今から打ちましょう。」それから天皇は額が既に門の高い所に置かれていた
ので、はしごを持ってくるよう命じた。けれど弘法大師は門の前の舗道に立って
無造作に額へ筆を投げると、そうして投げられた筆は極めて見事に点を打って
手元に戻って来た。
 また弘法大師は京都の光化門と呼ばれる天皇の御所の門の額を描いた。さて、
その門の近くに木百枝《きのももえ》という 名の男が住んでいて、弘法大師の書
の文字のひとつを指差し冷やかして言った「あら、あれはふんぞり返った力士の
ようだ。」その夜、百枝は寝床に力士がやって来て彼の上に飛び乗り両の拳で殴
られる夢を見た。強く打たれた痛みで叫び目が醒めると宙に昇る力士が見え、前
に笑った書の文字に姿を変えて門の上の額に戻った。
 そして偉大な技量で有名な小野茂徳《おのもとく》という別の書家がいて、弘法
大師の書いた朱郭門の額のいくつかの文字を笑い、朱の文字を指して言った「朱
がまるで米のようだ。」その夜、冷やかした文字が男の人になる夢を見て、その男
が彼の上に倒れこんで跳び上がったり下がったりして「見たか、我は弘法大師の
使いだ。」と言いながら顔を何度も何度も──まるで杵を上下に動かして米を叩い
て精米する米つきのように──打った。目が醒めると、ひどく踏みつけられたかの
ように血を流し怪我をしている自分に気が付いた。
 弘法大師の死から随分たってから、御所の2つの門──美しい幸せの門の美福
門と素晴らしく偉大な門の光化門──の彼が書いた名前がほとんど消えているの
が分かった。そして額を復元するよう天皇は行成という名の大納言[1]に命じた。し
かし行成は他の人達に何が起こったかを思うと天皇の命令を行うのが怖く、弘法大
師の罰を恐れ、お供えをして何か許しの印《しるし》をもらえるよう祈願した。その夜、
弘法大師が夢に現れて優しく微笑み言った「陛下のお望みを叶える時に恐れては
212:弘法大師の書4◆YAKUMOZcw. 04/08(木) 23:41 XHiqwpwH0 [sage]AA
>>211の1行目は間違いなので削除

なりません。」そうして本朝文推という本に記録されているように彼は官公4年
の1月に額を修復した。
 この出来事の全ては友人アキラが語ってくれた。

[1]大納言、古代朝廷の高官の役職。
213:小林◆YAKUMOZcw. 04/08(木) 23:52 XHiqwpwH0 [sage]AA
Glimpses of Unfamiliar Japan(知られざる日本の面影)より
The Writing of Kobodaishiでした。

仕事多忙の為、翻訳はほとんど進んでいません。弘法大師の書の翻訳
も何年か前にしたまま見直さないまま投稿しています。

あと1話、鎌倉の十一面観音の話を近い内に投稿できると思います。
その後は残す長文の1話が翻訳できたら、英文和文とも翻訳してサイト
アップや電子書籍の出版ができるのですが、まだまだ先になりそうです。
214:十一面観音◆YAKUMOZcw. 04/29(木) 23:01 YbLjnxCC0 [sage]AA
 厳正天皇の御代、大和国に放棄菩薩の生まれ変わりでは
あるが、庶民の魂を救済するため普通の人々の間に転生した
仏教の僧侶の徳堂上人が住んでいた。さて、その頃徳堂上人
が夜中に大和の谷を歩いていると素晴らしい輝きを見かけ、そ
の方角へ行ってみると倒れた楠の木の幹から出ているのが分
かった。木からは芳香が漂い、その輝きはさながら月光のよう
であった。こうした兆候から徳堂上人はこの木が尊い物と知り、
熟考の末それを元に自分が観音像を彫るべきと思った。そして
読経をし念仏を繰り返し霊感を授かるよう祈願していると、その
間に老人と老婆が前に来て立ちこう言った「あなたの願いが、
天の助けを借りてこの木から観音様のお姿を彫ることだと承知
していますから、祈り続けなさい、像は我々が彫りましょう。」
 徳堂上人が命じられたようにすると、巨大な幹がするすると同
じような2つの部分に割れて、それぞれが肖像の形に彫られ始
めるのが見えた。3日の間彼らがまめまめしく働くのが見られ、
3日目にその仕事は完了した──目の前には完璧に仕上げら
れた2つの観音像があった。そして見知らぬ人達に言った「名の
有る方々と存じますが、お祈りにあたってお教え頂けませんか。」
それに老いた男が答えた「我は春日明神なり」女も答えた「天照
皇大神と呼ばれる太陽の女神が私です。」そして話した通り そ
れぞれの姿が変わり天に昇って徳堂上人の視界から消えた。[1]
215:十一面観音2◆YAKUMOZcw. 04/29(木) 23:02 YbLjnxCC0 [sage]AA
 この出来事を聞いた天皇は、お供えを用意して寺を建てるため
に代理を大和へ送った。また偉大な聖者行基菩薩が来て像の開
眼供養をし、天皇の命で建てられた寺にささげた。そして像のひ
とつを寺に安置し「そなたは生きとし生ける物の全てを救うため
何時までもここに留まりなさい」と命じた。しかしもうひとつの像は
海に投げて「そなたはたとえぼろぼろになったとしても全ての生活
を護るのに最善の場所へ行きなさい」と言った。
 さてその像は鎌倉へと漂った。夜の間にそこへ着いて辺り全体
にまるで海から昇る太陽のような大きな光を発し、強い光に目を
覚まされた鎌倉の漁師が舟を出して、漂う像を見付け岸へ持ち帰っ
た。そして天皇はそれのために寺を建てるべきと命じ、その寺は
鎌倉の開高山という山の上で新長谷井寺と呼ばれた。

[1]この古い伝承は、仏教が既にインドとチャイナで吸収したよう
に神道の神性を吸収する努力の実例として独特のおもむきが有
る。国教として神道が大きく復活するのにこうした努力が存在する。
しかし出雲と西日本の他の地域おいて神道は常に優勢なままで、
多くの財産を仏教へ流用さえして習合している。
216:小林◆YAKUMOZcw. 04/29(木) 23:07 YbLjnxCC0 [sage]AA
Glimpses of Unfamiliar Japan(知られざる日本の面影)より
Story of a Jiu-ichi-men-Kwannonでした。

あと1話「踊る女」という話を翻訳中です。平日は1日1時間
しかパソコンの前に座れないので、完成はまだまだ先になり
そうです。
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