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【全米が】なんか笑える霊体験【テラワロス】外伝9
360:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 18:48 zZaDaoB60AA
ゴングが鳴った話
それは数年前に鳥取‐島根旅行をしていたときのこと。
旅行自体の内訳としては、前半ぼっち鳥取巡り、ラスト1日に現地知人と合流して島根巡りというものだった。
夜行バスで現地に到着し、早朝にすら開いていない現地チェーンカフェに軽く辟易しながらも、目的の遊覧船に海鮮丼や海辺散策に沖の岩にある鳥居鑑賞と良い時間をすごした。
そうして初日の目的を終えたのだが、空は小雨ながらも時間はまだあるし、バスも本数が結構あった(少なくとも使った路線は平日日中ならば一時間に数本あった)ので、予定から外していた砂丘を見に行こうと思い立ち、バスに乗り込んだんだ。
バスに揺られながらゆったりとした道路を走って車窓に流れる景色を眺めていると広大な砂の大地が見え始め、「(なるほど、これが音に聞く鳥取砂丘か)」とテンションを上げて眺めていると、不意に、赤い大きな鳥居も見え始めた。
バスは近場の観光地の名前を冠した停留所のアナウンスを流すと、私は降車ボタンを押してそこで降りた。
小雨は止んでおり、広がる砂丘と砂の感覚にテンションが上がったが、気になったのは先ほど見かけ、今そこそこの距離にある赤い鳥居とその向こう側。天候も相俟ってか、妙な雰囲気を漂わせていた。
私は先に参拝がてら、神社散策を先に済ませようと砂丘を背を向け鳥居をくぐった。
向こう側は草木もそこまで生い茂っているわけでもなかったが、どこか鬱蒼とした陰気な雰囲気であり、くたびれた印象だった。遠目には広い池があってそこの中央に浮島のようなあり、そこに鳥居か社殿が建っていたので恐らくは弁天系の信仰なんだろうな、とアタリは付けられた。更に奥へ入って行くと、本殿なのか奥社なのかはわからないが、小ぶりな社殿が建っており、その周囲にはとぐろを巻いた白蛇の置物がぐるりと並べられていた。漂う気配、世話のされていない狐塚のソレと酷似。つまり、コレは崇敬や祈願ではなく、人間の欲望を叶える目的を最優先に形成された空間。
正直な感想は「(うへぇ)」の、一言。
そして、その社殿が最奥だったため、散策は終了と散策料金代わりの賽銭を出して礼拝を済ませ、私は来た道を引き返して神社から出ようした。
361:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 18:52 zZaDaoB60AA
が、完全に抜け出ようとしたその時、小康状態だった天気が急激に崩れ始め、雨が降り始めた。
多少の雨ならば持っていた折り畳み傘(なお靴は以降巡る予定の寺社の関係上で最初からレインブーツ)で停留所名にもあった観光施設へ赴いたのだが、それではフォローし切れない程の豪雨になり始め、止む無く近くのプレハブ小屋の軒下を借りた。
山の天気は変わり易いため今のような変化も予想の範囲内であり、そして変わり易いがためこのような豪雨は長続きしないだろうと、そう高を括って、落ち着くのを待った。
が、雨の量は収まるどころか勢いを増す一方。土砂災害すらも起きそうなレベルになっていった。
その、バケツどころか浴槽をひっくり返したような雨に、おれ。
「(いやいやいや、いくら山の天気はアレとはいえ、流石にコレはおかしすぎね?)」
流石に、焦っていた。
「(つか、施設終了時間がそこそこ差し迫ってて、鳥居の外はすぐそこだってのに、なんでンなとこで足止め喰らわなあかんのよ)」
と、焦りにバフされて思わず独りでイラァッとしていると、
不意に、豪雨に隠れていた気配が一瞬だけ垣間知覚して、
知覚した気配をトラッキングするとここの土着神で、
トラッキングした土着神の思念に注視すると、
思慕と、惜別と、拒絶、の、感情。
つまり、早い話が、
ここに来た私を気に入って離脱して欲しくない感情が荒ぶって、この土砂災害警報も時間の問題な豪雨を降らせている、と。
少なくとも、私の十何倍も何十倍も生きているだろうはずの、存在、が。
362:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 18:52 zZaDaoB60AA
――ほぅ?
おれのなかで、カーンと、ゴングが鳴り響いた。
363:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 18:58 zZaDaoB60AA
「(ふざけんなぁああぁあああああああ!!!! なんでそんなことで癇癪起こしてやがんだぁああぁああああ!!!)」
雨が、一瞬弱まった気がした。
「(感情が荒ぶるのはまだいい!!! 問題なのは、それを外に出すんじゃねえよ!!!!テメーの癇癪でどれ程の被害出すのか、お前わかった上でやってんだろ!!?ァあ!!?)」
雨脚は強いままだが、細くなり始めた。
「(だいたいなぁ、ジブンでジブンの機嫌を取れないなんて、お前どんだけ無駄に生きてきたんだよ!!ジブンでジブンの機嫌を取らずに癇癪起こして周囲にどうにかしてもらい続けてって、そんな根性だからヒトが愛想つかせて離れて周囲が寂れ続ける一方なんだろ!!!)」
実際は、もっとかなりエグいことを機関銃なみに云ってたのだが、言語として覚えている限りだとこのぐらいなんだ。
――コレなんかにしだらを出すまでもねえ!! おれひとりで充分!! 祟られる?呪われる? ハッ、こんなジブンの機嫌一つも取れないようなヤツの祟りを受けて呪い殺されるようなザコのおれなら死んで当然だ!!!
ニンゲン、気が立つと怖いですねぃ。
雨が完全に弱まって雲すら半紙レベルになった改善天候にも舌打ち一つで返すなんて。
「(おれが良識ある優しい人間だったことに感謝するんだな!!本当はお前を殺しても良かったんだが、ここでお前を殺すと一帯のパワーバランスが崩れる危惧があるんだよ!おれの目的は観光であって現地に混乱を引き起こすことじゃねぇっつーに、ったく。これだから鄙びたとこのヤツわ……癇癪に物云わせやがって!!)」
そうしてぶちぶち文句の念を垂らしながら、折り畳み傘を開いて
今度こそ、その場から離脱し切ることに成功した。
ただ、鳥居の外へ向かう途中、もう夕刻に差しかかろうというのに人気のない寂れたこんな場所に入ってくる自動車とすれ違ったんだが、いったい何の用があったのだろうか。
364:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 18:59 zZaDaoB60AA
そんなこんなでなんとか観光施設の最終入場時間までには間に合い
、砂丘の砂を使った立体アートを楽しみ、周辺散歩に高い建物がない雄大な夕刻の景色に胸を打たれ、もののあはれを堪能する。
そして閉店ギリギリなショップで、現地生乳を用いたソフトクリームに二十世紀梨のプリザーブドソース掛けを注文し、外のベンチ
座って地物の味を楽しむ。
と、何やら同情めいたような労うような気配がコチラに向けられているのを察知し、食べながらソチラを見ると、そこにあったのは高いところに設置された小さな稲荷社。諸々を祈願されて作られた、少なくとも先程のような欲望実現ありきとは全く違う、ちゃんときちんとされたもの。
――たいへんだったね
その思わぬ労いに、思わず。
「(も、そうなんですよ!!お前を喜ばすために来たわけでもない上にあの仕打ちが。ほんとやってられませんわ!)」
と、豪速球で返してしまったため、
先方から『ヒェッ』と怯えられてしまい完全に閉ざされしまった。
ごめんて。
――――
365:739◆Al9ki804zA 10/13(水) 19:23 zZaDaoB60AA
基本的に、思い出したもの、書けそうなもの、からガリガリ書いているのですが。
「あれ?このエピ書くなら先にアッチ書いといたほうがいんじゃね?」
と、アレコレ考えてしまい、気付けば二ヶ月経過。
単に、休みでアソビ予定もない雨天で完全に「何もすることがない(晴れてアソビ予定が無ければ掃除洗濯買い出しと結構忙しない)」日が無かった、というのもありました、が。
池袋ネカフェとゴングの話はもっと後にしようかと思っていたのですが、前の十年前帰省エピと池袋ネカフェエピは多分近いほうがいいだろうなと思ったのと、
池袋ネカフェエピを書くのなら数年前の池袋ミネラル帰りからのエピを近い範囲で書いたほうがいいよなと思い、
その池袋ミネラル帰りからのエピを書くのなら先にゴングの話を書いておいたほうがいいよなと思い、
そして池袋ネカフェエピとゴングの話は近いほうがいいよな、と。
なお、いつか書く池袋ミネラル帰りからのエピ自体は結構短いかと思われます、ハイ。
366:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:07 bIReyCZV0AA
久々に神を殺した話
それは今から数年前の、コロナ禍前の池袋ミネラルの後のこと。
当時の池袋ミネラルは開催日の枠ごとの完全入れ替え制などではなく、チケット一枚あれば好きなタイミングで自由に出入りができた。
そして、私はその年も土曜日に有給を取り、土日の二連予定。
土日とそれぞれ違う人間と回る予定で、そのどちらも来れる時間に会場内で落ち合い、一緒に見て周り、相手が疲労を申告したら適宜食事や茶といった休憩を挟む、といった流れである。なお、相手申告なのは、私は体力が比較的あるほうであり、たぶん脳梗塞の四肢障害を気合いと根性で無理矢理動かし続けたために精神が肉体を凌駕してしまい疲労感を覚えにくいためである。ただ、しだらから“休め”とアタマを叩かれたら流石に休むが。渋々。
その年も、例年通りだった。
いつものように友人とブースブースを人ごみを掻き分けながら見て回り、ジブンの目当てを探し、友人に鉱物の簡単な解説や説明をしていく。たまに、業者さんとお喋りして、ならではの裏話や苦労話を聞いたり、或いは鉱物とは無関係な業者さんの生い立ちを聞いて声を上げて笑ったり、ブース裏手を借りて水分補給したりと、何しに来たのかたまに結構わからなくなる。
そして、閉場時間まで残り僅かというところで、私と友人は会場を後にした。
367:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:08 bIReyCZV0AA
サンシャイン内を歩きながら、夕食の場所について話す。選び考えるのが面倒だというのと、料理にハズレが無く小皿料理を品数多く頼め、ドリンクも豊富で酒が好きな私にもアルコールどころか炭酸すらアウトな友人にも優しい。そんな理由で、いつものようにキリンシティにする。遊びに行くエリアにだいたい存在するのが有り難い。
そして、目的地へ向かうため、私は友人に道案内を頼んだ。
私は、サンシャインから現地までの道のりを、おぼろげながら「なんとなく」は覚えているのだが、その「なんとなく」で痛い目に遭ったことは過去n回。つまり、アテにならない。そして私の電話は買い換えたばかりでも二つ折り仕様のままであり、タブレットも持ってはいるのだが、回線は家の固定ワイファイか外の各無料ワイファイか、なのでガイドは実質不可能である。
あと今回に限って私が道案内できない、しないほうがいい理由があったのだが、念のためにソレは友人には伏せて道を探してもらった。
しかし、彼女も大概だった。アプリを開いて探してくれるのはいいのだが、どこをどう動くのか、と悩みに悩んでいた。私も一緒に見たほうがいいのだろうが、前述のことがあり、画面を見ず口を挟まず彼女についていった。
徘徊していたのは夜も中々の時間だったが、かつてあちらこちらで蔓延っていたヤな気配は、もう全く感知しない。前にネカフェ一棟分の気配を消し飛ばしたのが脅しとしてキいているようだ。やはり暴力は強い、力こそパワー。
368:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:09 bIReyCZV0AA
そうして十数分ほど経過しただろうか。不意に、私は意識を持っていかれるように、持って行かれるがまま顔を向けてしまい、
ジブンで、顔が歪んでいくのがわかった。
頭にはあったのだが、寄る予定も気も全く無かった。
冬の夜で暗くなりながらも街灯の光で照らし出された、小さいながらも小奇麗でそこそこ立派な社が、そこにはあった。
「チッ」
リアルに舌打ちをし、被っていた新品な中折れ帽を外して一礼。
友人は私の急な行動に少し怪訝そうな様相を見せたが、先にあった存在に気付いて腑に落ちたようだった。そして、同じく小さく一礼をした。
そこからは、ものの五分と掛からずキリンシティに到着できた。大幅な、遠回りだった。
369:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:10 bIReyCZV0AA
席に案内されて、それぞれ好きな物を好きなように注文した。
数分後に、飲み物がそれぞれに届く。私はハーフアンドハーフ、友人は自家製シロップ入りの午後ティー。
私はビールを半分ほど飲んで、愚痴をこぼした。
「あんたなら無いと思ってたけど、やられたわ」
そして、友人に話した。
道はなんとなく覚えてはいたけども普通に曖昧すぎてアテにならず、アテにならないからこそ意識の隙を突いてあの社(なお当事社の名誉のために言っておくが、何の変哲も曰くもヤな気配もないフツーの社)がヨび寄せてクる懸念があった。だから、回線のこともあるとはいえ、道案内を丸投げした。
彼女の母と妹は結構な霊障体質の一方で、彼女の父と彼女自身はそういうことが全くない、というのを聞いていたため、向こうがコイツの意識をジャミングできるとは考えていなかったし、してもそういう相手にはコストが掛かりすぎるため、割に合わないからしないだろう、と思っていた。
しかし、結果はこの通り。
コストを掛けてでも実行させ、まんまと付近を通らせ、私の意識と視界に入れさせることに成功した。
私は腹癒せに残りのビールを飲み干して、新しいのを注文した。そうでもしないとやってられない気分だった。
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