【全米が】なんか笑える霊体験【テラワロス】外伝9
368:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:09 bIReyCZV0

そうして十数分ほど経過しただろうか。不意に、私は意識を持っていかれるように、持って行かれるがまま顔を向けてしまい、
ジブンで、顔が歪んでいくのがわかった。

頭にはあったのだが、寄る予定も気も全く無かった。
冬の夜で暗くなりながらも街灯の光で照らし出された、小さいながらも小奇麗でそこそこ立派な社が、そこにはあった。

「チッ」

リアルに舌打ちをし、被っていた新品な中折れ帽を外して一礼。
友人は私の急な行動に少し怪訝そうな様相を見せたが、先にあった存在に気付いて腑に落ちたようだった。そして、同じく小さく一礼をした。

そこからは、ものの五分と掛からずキリンシティに到着できた。大幅な、遠回りだった。
369:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:10 bIReyCZV0

席に案内されて、それぞれ好きな物を好きなように注文した。
数分後に、飲み物がそれぞれに届く。私はハーフアンドハーフ、友人は自家製シロップ入りの午後ティー。

私はビールを半分ほど飲んで、愚痴をこぼした。
「あんたなら無いと思ってたけど、やられたわ」

そして、友人に話した。
道はなんとなく覚えてはいたけども普通に曖昧すぎてアテにならず、アテにならないからこそ意識の隙を突いてあの社(なお当事社の名誉のために言っておくが、何の変哲も曰くもヤな気配もないフツーの社)がヨび寄せてクる懸念があった。だから、回線のこともあるとはいえ、道案内を丸投げした。
彼女の母と妹は結構な霊障体質の一方で、彼女の父と彼女自身はそういうことが全くない、というのを聞いていたため、向こうがコイツの意識をジャミングできるとは考えていなかったし、してもそういう相手にはコストが掛かりすぎるため、割に合わないからしないだろう、と思っていた。
しかし、結果はこの通り。
コストを掛けてでも実行させ、まんまと付近を通らせ、私の意識と視界に入れさせることに成功した。

私は腹癒せに残りのビールを飲み干して、新しいのを注文した。そうでもしないとやってられない気分だった。
370:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:14 bIReyCZV0

友人は、私の異様な「神好かれ()」を私から聞いてはいたし、そして実際に現場に何度か居合わせることもあるので理解はあった。
しかし、今一つ腑に落ちないような様子だった。
「でも、なんであんなに嫌そうに?」
私は、ジャーマンポテトを貪り食って飲み込んで、答えた。
「単純に、相手の思惑通りなのが気に食わない。あと、手段が悪い。道に迷わせてジブンのとこに来させるって、結構ナイだろ。相手の意識の隙を付いて、どうこうするってのは。だから『嫌』だと思ったことをキチンとアピールしないと駄目なんだよ。じゃないと、連中付け上がるから。感知できない他の連中への牽制も兼ねてね」
私としては、感情それ自体は行動バフのエネルギーでしかない位置づけであり、感情表現は他者へのコミュニケートツールか、発生したエネルギーを消費し切るための自身に向けるポーズだ。
発生した『感情』が向こうの連中に漬け込まれないよう、隙なく無駄なく利用し消費し切り、無理なく消化していく。不完全燃焼の感情エネルギーこそ精神の毒だというのは嫌という程わかっているし、ソコが狙いどころだというのも否が応なしに思い知っていた。生身の人間ですらソレを利用してくるのだ。時と場合と相手によっては私もやるし。

だからこそ、嫌なものは嫌だと、先方に表明しながら付け入られないように発生した感情エネルギーを消費し切らせ、
その上で「それでもコッチはジブンの感情とはベツに礼儀を守るぐらいの度量はあるんだぞ」と、見せておく。

ゆえの、顰め面舌打ち挨拶、である。
371:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:15 bIReyCZV0

「あーあ、連中ホントめんどくせぇ」と私が更に愚痴をこぼすと、
「でも、神様って、めんどくさくない印象がないんだけどwww」と草を生やしたので、
「確かにwwwだったわwww」そのまま二人して笑いながら食事をして、別れた。

結構な遅い時間になってしまっていたので、最後の路線の電車は本数少ないから乗るまでかなり待たされるだろうなぁ、でもコレ乗っちゃえばすぐだもんなぁ、と取り留めなく考えて次の改札まで向かったら、土曜とはいえその時間には珍しくヒトでごった返していた。
なんだと思って進んでいくと、流れてきたアナウンスの内容に愕然とした。

隣駅で人身事故が発生し、復旧の目処がつかないとのこと。

それを聞いた後で電光掲示板を見れば、発車予定時刻が今の時間より少し早いまま止まっていた。池袋駅からの電車にあと二本早く乗れていたら、充分に逃れられていた。

もし、ミネラルをもう早く切り上げていたら、あの社に寄らないままだったならば、事故に捕まらずに乗れて帰宅できていたのだろうか。
そんな栓のないことを考えたところで時間が戻るわけでもなく、また路線の復旧が進むわけでもない。
この駅のネカフェに泊まろうかとも考えたが、明日も明日で違う人間とミネラルに行くのだ。事情を話せば相手は気にしないどころか労ってくれるだろうが、こちらとしてはきちんと着替えて風呂入って寝た状態で行きたい。今日も長時間歩き通しで、明日も歩き通すのだから。
372:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:15 bIReyCZV0

なので、私は意を決して駅のタクシー乗り場へと向かった。
深夜時間もあって料金はエグいことになりそうだが、背に腹は変えられない。

タクシー乗り場は案の定長蛇の列で、更に吹きっ晒しの寒風で凍える思い。
近くに見えたバスターミナルで、家の駅までのバスは確かあったはず。と、考えるも、この時間帯でローカルが過ぎる路線バスの本数は期待はするだけ負けるし、何より散々寄り道した挙句の駅到着だ。今のタクシーを待ったほうが、余程に早く帰宅できるのは眼に見えていた。

「(にしても、コレは運なさすぎだろ。アタシにしては珍しい)」
私は、こういうときのタイミング運が良すぎたりする。
電車に乗ろうとしたら、ちょうどすぐ来る電車が急行だとか、私の乗った後で人身事故だとか、そういうのだ。
「(でもまぁ、無くはないからなぁ。タクシー代はイタいが。せめて明日の飯代は残ってくれ)」
暇すぎて、思考だけが進む。
「(にしても、復旧見通し立たず? それってモツやナニやらが飛び散ったってこと? それでも、コレがあそこの路線だったら二十分も経たずで復旧できるんだけどなぁ……無いもの強請りはできないか。今時期の名物とはいえ、巻き込まれるのはなぁ。つかこれ賠償どんだけだ?この規模だろ?家族がいたら間違いなく借金地獄で今度はその家族が、って)」

寒さで思考が今度こそ取り留めなくなり、やがては寒すぎて考えることすらもできなくなって、やっと先頭になった。とはいえ、まだタクシーは来ていない。人数が人数過ぎて、運んだ後で駅に戻ってくるのにも時間がかかるようだ。
タクシーの待機列は変わらず長く、見える駅の様子も先ほどと変わっていない。向こうで復旧を待たなかったのは、取り合えず正解のようだ。
373:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:16 bIReyCZV0

そうこうしているうちに、やっとタクシーが来てくれたので、乗車した。
目的地は自宅。住所と併せてランドマークになりそうな建物を話すと、地元でもないのに理解してくれた。ありがたい。

駅から離れ、温かい車内で、やっと一息。
後部座席でダラけた状態で座り、寒い外を車窓から眺める。

街灯はそこそこあるが、冬の遅い夜。外を眺めようにも、眼に映るのは闇を塗り込めたガラスに映る自分の姿ぐらい、の、はずだった。

自分の顔が映り続けるだけの車窓の黒いガラスの向こう側に見えた、ちいさな社。大分前に、その駅周辺の徘徊で通りがかったことのある、そこ。
イヤにはっきり眼に見えたソレから伝わってきたのは、気恥ずかしさ、喜び、満足感、達成感、そして、


瞬間、私はその社の主を、縊り殺していた。
374:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:18 bIReyCZV0

久々に神を殺したが、やはり私にはコレに関する『感慨』というものはないというのを、改めて思い知った。
私にとって、コレは、蚊を叩き潰したり、雑草をむしるカンカクと、大差なかったのだ。

「(にしても、社持ち確定を殺したのは初めてだけど……だとしても、あれは流石にアウトだろ)」

社とかソウイウものは、連中にしたら謂わば『装置』である。関わる当事者たちが、各々の目的のために、確率を操作させたり、対象の意識をジャミングしたり、隙を突いたり、ナニかを封じ込めて何かに利用するためのエネルギーや補助装置にしたり。
もちろん、神が全員ソレが無ければ何もできないわけでもなければ(しだらェ)、社を持っているからとはいえ『装置』として扱いきれる訳でもない(あの遣使さんがしだらを投獄していた理由はならず者の管理が三割、自身が装置を扱い易くするためが七割)。
ただ、あの主は、装置を「ちゃんと」使えているということは、そこそこに俗世にも知見ある存在なのだろう。

だからこそ、アウト、だった。
375:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:20 bIReyCZV0

「(ヒトひとりの会いたさに……どころか一目見たい眼に入って欲しいがため『だけ』に、弱っている人間のココロに付け入って……いや、アレは結果だ。『なんでもいいからあの人間をここに近づかせたい』って一心で『なんでもいいから』確定発動させた。……たといアタシが『悪感情』を持ったとしても、最後に礼を貰えれば、貰えなくても、ただコッチに来て意識を僅かでも向けてくれればそれだけで、って)」
どっと、疲れが出てきた。タクシーのシートが心地よいのが救いだった。
「(想いが先走り過ぎて手段を考えることもなく『なんでもいいから』と発動させて、その結果がアレ。ヒト一人を死に追い込んで、何百人もの人間を混乱させて、遺族は不幸確定ルート。達成タスク内容に対して、発生した業が深過ぎる。確かにコレは「いつか起こり得る」ことしか起こらない。ひょっとしたらそのヒトはここではないどこかの違う形でソレを起こしたかもしれない。でも「起こらない起こさないまま終わった」こともだって十二分に在り得ること。だのに、大きな損害として実現させてしまったことに罪悪感を抱くどころか、タスク『成功』の達成感さえ抱いて……絶対同じことを繰り返す。社が扱えるなら、発動手段の予測や精査、あるいは確認ぐらいできたはずだろ? それをしなかった、できたのに怠った、そもそもできなかった、そんなことどうでも良かった、どれもとっても社持ちなら更にアウト。後先考えず自分の想いや達成感だけを先行させて確定発動し続けて、更にトンデモを起こすだろうよ。私が殺さなくても、いつかナニかに滅され淘汰されたことだろうけど……それまでにどれほどコトが起きるか。考えただけでお腹の頭痛が痛いわぁ。もし仮に、何かで今晩のあそこの社でのことを知った上での行動なら、どんな手であっても近くにさえ来てくれれば挨拶してくれる、だったら尚更だわ。感知外の連中にも見せしめないとアタシ自身や周囲の安全が危うくなるわぁ)」

タクシーが伝えたランドマーク付近まで来たので、料金を支払い、翌日の鉱物購入可能金額に絶望し、タクシーを降りてそのまま夜風に当たりながら帰宅した。

そして、その後も何度か池袋ミネラルに行っているが、あの「小さな社」に不意打ちで呼ばれたことは、今のところ、ない。
376:739◆Al9ki804zA 12/03(金) 22:27 bIReyCZV0


なお余談だが、この日、新品同様の中折れ帽と買い換えたての携帯電話を見事に紛失し、更に携帯電話の紛失に気付いたのは翌日に家を出た後の電車内という大失態を犯す。

しかし、タブレットは持っていたため先方への当日連絡にはコンビニの無料ワイファイで済ませることができ、携帯電話自体は紛失サービスを利用して失くした二日後にあっさりと手元に戻った。

ただ、購入から三回ほどしか被っていない、タクシー内では確かに被っていたはずの中折れ帽だけが見つからなかったのだが、
コレが今までには無かった社持ちを殺したゆえの初めての代償だったにしても、量産品の一つ税込1万円弱(しかも同じ服飾販売店が当時その乗り換え駅にあったし実際そこで再購入した)で済まされてしまう、というのは余りにイヤ過ぎるので、やっぱりよくあるうっかり不注意紛失でしかないと思うことにするんだ。

――――
377:739◆Al9ki804zA 02/22(火) 22:32 YEO98kD+s

極稀にだが、メディア映像を観ていると、その場の連中の存在を察知することがある。

例えば、ハワイをメーン舞台にしたとある二流邦画の自然深いシーンでは、現地精がうじゃってカメラらしき前に覗き込んだり役者を好奇心で眺めたり、
自然開拓を取り上げた番組の神社修繕編では、その社の住民らしきモノが怪訝かつ胡乱げな様相を出演者に向けていたり、
ゲーム実況ライブ動画では、宅配便のチャイムが鳴って実況者がそこに意識を向けたと同時に害意はある(が"実"害までには到底及べないだろう)念体が室内に入り込んで来たのを察知したり、と。
得られるのはそんな毒にも薬にもならず面白げの欠片もない情報ばかりである。
閑話休題

いつかの年始に正月らしさで神社特集番組がローカルチャンネルで放送された。
私はソレを興味本位で録画して観たんだが、導入部分は当たり前に変哲もない情報と内容。組む神社の最寄駅で案内人が軽い説明をするというもの。

紹介していた内容はごく一般的な普通な『神話』メーンで勝手に期待していた民俗学色が案の定薄かったので興味が失せ始めていくのがわかっていくと、
不意に、資料画の映像からシーンが変わり、神社の周囲映像が流れたと思うと、案内人が神社の中に入って神社関係者に話を訊く場面に移り、
その神社内で生息している本来ならばキレイ側であるはずのモノたちが、憎悪や憤怒、怨嗟を、案内人に向けて発していた。
1-AA