怪談:妖しい物の話と研究


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【全米が】なんか笑える霊体験20【テラワロス】
1 :本当にあった怖い名無し:2011/08/22(月) 13:43:34.27 ID:sZYkNPIh0
まとめサイト
http://wararei.yakumotatu.com/

前スレ
【全米が】なんか笑える霊体験19【テラワロス】
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/occult/1308555003/

451 :本当にあった怖い名無し:2011/09/21(水) 14:21:15.94 ID:+Fui0DiB0
去年の秋だった。受験で毎日図書館に出入りしていた僕は、
運命的な出会いをした。座ってノートをとっていたときに、ふと
正面をみるとメガネをかけた黒髪の女の子が立っていた。

メガネの奥にひそむ大きくて優しげな瞳が印象的だった。
彼女は辞書ほどある分厚い本をかかえていた。よく見るとその本は
僕の大好きな安部工房という小説家の作品集だった。

僕は彼女の動きを目で追う間、絶えず緊張していた。
毎日勉強続きで、こんなときめきなど何年も体験してなかった。
だからなのか、おさえられぬ胸の高鳴りに動揺していた。

だけどいてもたってもいられず、僕は立ち上がり彼女のもとへ向かった。
そして彼女にこう言い放った。
「その本ゆずってくれないかな」
僕は前々からずっと貸し出し中のまま返却されない阿部工房全集を
待っていた。読みたくて読みたくて仕方なかった。この図書館にあることも
わかっていた。ただ借りたきり返却しないクズのせいで読むことができなかった。

ようやく返却された安部工房全集。次は僕が借りて堪能するはずだった。
それなのに、勉強に夢中で横取りされてしまったのだ。許せない。
僕はこの図書館、いやこの県内でもっとも阿部工房の素晴らしさを
理解できる人間だ。阿部工房全集は僕にこそふさわしい。

色恋にしか興味のない女子高生が大人ぶって読んでいい本じゃない。
東野圭吾あたりでも読んで読書した気になっていればそれでいいんだ。
「あなたいったい誰ですか?」
突然声をかけられて驚いたのか、女は僕を探るような目つきで見た。
「その本は僕が前から借りたかったものなのでゆずってくれませんか」
「いやです。まだ全部読んでないので、さっき返してすぐ借りました」

頭部を鈍器で殴られたような鈍い頭痛がした。

452 :本当にあった怖い名無し:2011/09/21(水) 14:41:45.30 ID:+Fui0DiB0
レンタル期間を超過して借り続けていたのは、この女だったのだ。
あろうことか、返してすぐにレンタルしたという。女の傍若無人ぶりに
あきれた僕は、この女に礼儀など必要ないと理解した。
「そんなものは許さん。今すぐ本を返して僕に手渡したまえ」
さげすんだ目で女をにらみながら、はき捨てるように言ってやった。

すると女は、無礼な態度をとられたと理解したのか、僕をにらみつけた。
「いやです。それじゃ」
きびすを返して去っていく女に、僕は怒りが抑えられなかった。
女が10mほど離れた瞬間、凄まじい勢いで女の方向に走った。
それから女の背中に渾身の蹴りをおみまいしてやったのだ。

すると女は前方にふきとんでいった。
床に落ちた安部工房全集を拾うと、元いた席にもどり本を開いた。
ずっと読みたくて読みたくてたまらなかった本がようやく手に入ったのだ。
目頭があつくなった。生きててよかった。明日からの活力にしよう。
精読して読書日記をつけよう。阿部工房さい・・・あれ?

本を読もうとページをめくると、そこには女のデコレーションが
ちりばめられていた。ページのいたるところに、蛍光ペンで花やらハートやらを
書き込んでいるのだ。それから気に入った文にはラインを引いている。
僕はぶちぎれた。聖書と類するであろう阿部工房全集に落書きをほどこすとは
なんてふざけたクソビッチなんだ!許さん!阿部工房をけがした罪は極刑にあた・・・

ゴスッという鈍い音と共に視界が揺れた。何か硬い物で頭部を殴打されたようだ。
僕は机につっぷした。おおいかぶさる僕の体をどかして奪い取られていく本
僕を殴ったのはもちろんあの女だった。ただ痛いだけじゃない。これは当たり所が
悪かったようだ。意識が朦朧として・・・
気づくと僕は死んでいた。今も僕は図書館にいる。心残りである本が返却されるのを
待っているのだ。しかし今度本を借りていったのは、女ではなく警察だった。いつ返却されるのだろう。





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