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奇談
- 1 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:16:03.69 ID:XRRvBaIb0
- 【出版依頼】
【著者】ラフカディオ・ハーン
【翻訳編集】小林幸治
【予定価格】100円
小泉八雲の「怪談」に収録されていない、霊的な話や不思議な話を収録して
電子書籍にします。
話の画像はいつでも募集してます。謝礼はカラー2000円、モノクロ1000円、
著作権は絵師に残り、私に利用権を与え、著作権者は他所で利用しても良い
という方向です。
2015/03/09修正と追記
内容を追加した改訂版の無料アップデートはKindleの規約上不可能であると分かりました
14話程度で1冊作り3巻の電子書籍にする予定です
最後に全話まとめて1冊作り、計4冊にしようかと思います
- 2 :化け蜘蛛1 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:19:26.80 ID:XRRvBaIb0
- 化け蜘蛛
かなり昔の本では、日本にはたくさんの化け蜘蛛がいたと言う。庶民の
何人かは、まだ化け蜘蛛は居ると主張する。そいつらは昼の間は普通の
蜘蛛と変わらないが、夜がかなり更けて、誰もが眠りにつくと、とても、
とても大きくなって、恐ろしい事をする。化け蜘蛛はまた、人の姿をとる
不思議な力を持つとうわさされ──そうして人々を欺く。そういった蜘蛛に
ついての有名な日本の話が有る。
- 3 :化け蜘蛛2 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:21:11.24 ID:XRRvBaIb0
- かつて村の淋しいところに、化け物が出る寺が有った。その建物には
化け物がとり憑いているせいで、誰も住むことができなかった。化け物を
退治するために何度か勇敢な侍がその場所に向かった。だが寺に入った
後に再び話を聞くことは無かった。
勇気と賢明さで名高い最後のひとりは、夜の間に寺を見張りに行った。
そして、そこまで付き添った人達に言った──「朝になってもまだ生きて
いたら、寺の鐘を鳴らしてやろう。」それから提灯の明かりを頼りに、ひとり
で見に行った。
- 4 :化け蜘蛛3 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:24:28.73 ID:XRRvBaIb0
- 夜が更けた頃、彼はほこりまみれの仏画に見守られた祭壇の下に身を
かがめた。夜半を過ぎるまでは、おかしな物は何も見えず、物音ひとつ
聞こえなかった。それから体が半分だけのひとつ目の化け物がやって
来て言った。「人臭い」だが侍は動かなかった。化け物は去った。
それから坊さんがやって来て三味線をとても上手に弾いたが、これは
人の演奏ではないと侍は確信した。すぐに刀を抜いて跳び上がった。
坊さんは彼を見て大声を出して笑いながら言った──あんたはわしが
化け物だと思いますかね、なんてこった、わしはこの寺のただの坊主
ですが、化け物を近づけないために演奏していました。──この三味線の
音はお気に召しませんでしたか、少し弾いてくださいな。」
そして彼が差し出す楽器を侍はとても慎重に左手で握った。だが三味線
は即座に巨大な蜘蛛の糸に変わり、坊さんは化け蜘蛛になって、武士は
左手からしっかり蜘蛛の糸に捕らえられた自分自身に気が付いた。彼は
勇敢に暴れ、蜘蛛を刀で斬りつけ、傷を負わせたが、すぐに網の中で絡まって
しまいじっとするよりなく、動けなくなった。
けれども負傷した蜘蛛は、のろのろと逃げていった──そして日が昇った。
少ししてから人々がやって来て、恐ろしい網の中の侍を見つけ出し解放した。
彼らは床の上の血の痕を見つけ、跡をたどっていくと寺の外の人気の無い
庭に穴が有った。穴の外には恐ろしい唸り声が出ていた。彼らは穴の中に
負傷した化け物を見つけて、それを殺した。
- 5 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:35:03.53 ID:XRRvBaIb0
- Japanese Fairy Tale SeriesのThe Goblin Spiderという絵本からの
話でした。
Fairy Taleという言葉を直訳すれば妖精譚ということになりますが、
妖精が出てくる話は無いので、お伽噺という事でしょう。
元々が絵本の為に書かれた話なので、文章だけを読むと少し物
足りない感じがします。
元の絵本は全ページがネット上に存在しますので、探して見ながら
この翻訳を読むと面白いと思います。
- 6 :幽霊滝の伝説 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:13:56.16 ID:NE4wS9Rl0
- 幽霊滝の伝説
伯耆の国の黒坂村の近くに幽霊滝と呼ばれる滝が有る。どうしてそう呼ばれて
いるのかは知らない。滝の麓近くに人々が滝大明神と名付けた土地神を祀る
小さな神道の社が有り、社の前には信者からの供物を受け取る小さな木製の
金箱─賽銭箱─が置かれている。そしてこの賽銭箱にまつわる話が有る。
- 7 :幽霊滝の伝説2 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:17:03.55 ID:NE4wS9Rl0
- 三十五年前の凍てつく冬のある晩、黒坂のとある紡績工場─麻取り場─
で、一日の仕事を終えた雇われの女房や娘達が紡ぎ部屋の大きな火鉢の
回りに集まっていた。その時は面白半分に怪談話を語り合っていた。十を
越える話が語られ集まったほとんどが気味悪く感じながらも、恐怖の盛り
上がりが最高潮に達した頃、ひとりの娘が叫んだ「そうだ、今晩この中の
誰かひとりだけ幽霊滝に行ってみない。」この提案は全体に神経質な爆笑
を伴う金切り声を引き起こした……「私が今日紡いだ麻全部あげるよ」
集まった中のひとりがからかって言った「行った人にね」「そうしよう」別の者
が声をあげた「私も」三人目が言った。「みんなが」四番目が確認した……
その時紡績工の中のひとり、大工の妻の安本お勝が立ち上がった──
彼女には二歳になるひとり息子が有り、背中で包まれて気持ち良く眠って
いた。「聞いて」お勝は言った「みんなが今日紡いだ麻を全部私にくれるのに
賛成なら、幽霊滝に行ってくる。」彼女の提案には驚き呆れた叫びが返って
きた。しかし何度か繰り返した後で、真剣に受け入れられた。紡績工それぞれ
が、お勝が幽霊滝へ行ってきたのなら、その日の仕事の分け前をお勝のために
あきらめて手放すと合意した。「でも、本当に行ったのか、どうしたら分かるの」
鋭い声がたずねた。「賽銭箱を持って帰ったらいいんじゃない」紡績工達から
おばあさんと呼ばれる年取った女が答えた「証拠には十分だろう」「持ってくるわ」
お勝が叫んだ。そして背中に子供をおぶったまま、外の通りへと飛び出して
行った。
- 8 :幽霊滝の伝説3 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:19:29.41 ID:NE4wS9Rl0
- その晩は霜が降りるほど寒かったが澄みきっていた。人影の無い
通りをあわただしく下っていくお勝の目に、刺すような寒さのため扉を
固く閉めきった家々が見えた。村を出て、星の明かりだけを頼りに静まり
返る凍った田んぼの間を──ぴちゃぴちゃ──街道沿いにひたすら
走った。半時間ほどはまともな道沿いに、それから崖の下の曲がり
くねった狭い道を回って降りた。小道は進むほどに暗く粗くなって
いったが、彼女はそれをよく心得ていて、すぐにゴーゴーと水の立てる
鈍い音が聞こえてきた。ほんの数分の後、道は峡谷へとひろがり
──鈍い轟音は高く騒々しくなっていき──彼女の前に暗黒の塊に
反して浮かび上がる、滝の長い微かな光が見えた。ぼんやりと
社─の賽銭箱─が見分けられた。彼女は急いで進み出た──手を
突き出して……
「おい、お勝さん」不意に水の砕ける辺りから戒めの声が呼び掛けた。
お勝は立ったまま動かなかった──恐怖のあまり茫然としていた。
「おい、お勝さん」声が再び響いた──前よりも威嚇の調子が強かった。
だがお勝は実にたくましい女だった。すぐに麻痺から立ち直ると、
賽銭箱をひったくって走った。彼女は街道に到着するまでは、それ
以上の警告は何も聞かず何も見なかった。そこでひと息いれるため
立ち止まった。それから黒坂に着くまで──ぴちゃぴちゃ──しっかり
走って、麻取り場の扉をゴンと叩いた。
- 9 :幽霊滝の伝説4 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:21:19.84 ID:NE4wS9Rl0
- 女房や娘達がどんなに叫んだことか、賽銭箱を手にした彼女があえぎ
ながら入ってきたものだから。皆は息を呑んで彼女の話を聴き、水の方
から幽霊が名前を呼ぶ二度の声について語ると、共感の悲鳴が上がった
……なんという女だ、勇敢なお勝──麻を受け取るのに相応しい……
「でも坊やは凍えてるはずだよ、お勝」おばあさんが叫んだ。「火のそばの、
こっちで預かるよ」
「お腹がすいてるはずだわ」母親が声を上げ「すぐにお乳をやらないとね」
……「困ったお勝だよ」そう言っておばあさんは、子供を運んだ包みを外す
手伝いをした──「あら、背中じゅうずぶ濡れじゃない」それからかすれた
叫びを上げ、大声で喚いた「あら、血だわ」包みをほどいて脱がせて床に
下ろし、血でびしょ濡れになった赤ん坊の着物の塊からそのまま露出して
いる、ふたつの非常に小さな褐色の脚とふたつの非常に小さな褐色の手
──それ以上無かった。
子供の頭はちぎられていた。
- 10 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:28:09.27 ID:NE4wS9Rl0
- Kotto(骨董)からThe Legend of Yurei-Daki
でした。
- 11 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/08(金) 14:39:30.85 ID:NE4wS9Rl0
- 最後の「頭はちぎれていた」でも良いかもしれない
幽霊にちぎられたとは限らないのだから
- 12 :ちんちん小袴1 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:40:16.15 ID:fltZOasb0
- ちんちん小袴《こばかま》
日本の部屋の床は葦を編んだ分厚く柔らかで美しい複数の敷物で覆われて
いる。それらは共に非常に近接してぴったり合わせてあるから、あなたはその
すき間にナイフの刃を問題無くゆっくり滑らせることができる。それらは毎年
一度取り替えられ、非常に清潔に保たれている。日本人は家の中では靴を
着用せず、椅子やイギリスの人々が使うような家具を使用しない。彼らは座る
のも、眠るのも、食事も、時には書き物でさえ床の上でする。そういった敷物は
実のところ非常に清潔を維持しなくてはならないが、日本の子供は言葉を
話せるようになるとすぐに、敷物を傷めたり汚したりしないよう教えられる。
- 13 :ちんちん小袴2 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:40:56.81 ID:fltZOasb0
- さて 日本の子供達は本当にたいへん立派だ。旅行者の全てが日本について
楽しい本を書いたが、日本の子供達はイギリスの子供達やそれより腕白さで
劣る子供達よりはるかに素直だと発表している。彼らは物を傷付けたり汚したり
せず、自分だけの玩具でさえ決して壊さない。小さな日本の女の子は彼女の
人形を壊さない。いや、素晴らしい手入れをして、大人になって結婚した後で
さえずっと持っている。彼女が母親になり娘を持つ頃、その人形を小さな娘へと
与える。そして、その子も母親がしたのと同じ手入れを人形にし、彼女が大きく
なるまで保管し、最後に自身の子供に与え、その子もまさしく祖母がしたのと
同様きちんと遊ぶ。そうして私は──あなたにこのちょっとした話を書いているが
──日本で百歳以上の人形達を見てきたが、新品と変わらず本当に可愛らしい
外見だった。これは日本の子供達がどんな具合で非常に立派なのかあなたに
示し、どうして日本の部屋の床がほとんどいつも清潔に保たれているのか理解
できるだろう──引っ掻いたり腕白な遊びで台無しにされずに。
あなたは、全て、日本の子供達全員がそんな風に立派なのかと訊ねる──
いや、まれに、ごくごくまれに横着なのがいる。では、この横着な子供の家の敷物
では何が起こるか。大きな悪いことは何も無い──敷物を手入れする妖精がいる
からだ。この妖精達は、敷物を汚したり傷めたりする子供達を、いじめたり怖がらせ
たりする。少なくとも──かつては、そんなやんちゃな子供達をいじめたり怖がらせ
たりしたものだ。私はこの小さな妖精達がまだ日本に住んでるいるのか、全く確信が
無い──新しい鉄道や電信柱が怖がらせて、かなり多くの妖精達が去ったからだ。
だが、それについてのちょっとした話がここにある。
- 14 :ちんちん小袴3 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:48:27.72 ID:fltZOasb0
- かつて、たいへん可愛らしく、そのうえ非常に無精な小さな女の子がいた。
彼女の両親は裕福で、たいへん多くの使用人があり、この使用人達は小さな
女の子にとても優しく、自分のためにできる彼女がするべきことの何もかも
してくれた。おそらくこのことが彼女をたいそうな無精者にしたのだろう。彼女が
美しい女性に成長した時も、まだ無精なままだったが、使用人達がいつでも
服を着せたり脱がせたり髪を整えて、とても魅力的な外見にしたので、彼女の
欠点については誰も考えなかった。
ついに彼女は勇敢な戦士と結婚し、別の家で暮らすために彼と共に出て
いったが、そこは使用人が少なかった。実家で持っていたのと同じほどの
使用人がいないため、世間ではいつでも自分ですることのいくつかを、彼女が
しなくてはならなくなったので気が重かった。それは、着物を自分で着替えたり、
自分の着物の手入れをしたり、きちんとした小綺麗な身なりで夫を喜ばせると
いった悩みだ。しかし夫は戦士なので、しばしば軍隊と共に家から離れることが
あり、たまには望む通りの無精ができた。夫の両親はとても老いていて、人の
良い性格で、やかましく言わなかった。
やれやれ、夫が軍隊で留守のある晩、彼女は部屋の中の小さな雑音で目を
覚ました。大きな提灯のそばで、とてもよく見えるところに、奇妙なものが見えた。
なんだろう?
まるで日本の戦士のような服装だが、わずか二センチ余りの背丈の、数百の
小さな男達が、全員で彼女の枕の回りで踊っていた。彼らは夫が休日に着る
のと同じ種類の服──(裃《かみしも》、四角い両肩を備えた長い衣)──を
着て髪は結んで縛られ、それぞれが小さな二本の刀を身につけていた。全員が
躍りながら彼女を見て、笑い、全員が同じ歌を、何度も繰り返し歌った──
- 15 :ちんちん小袴4 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:49:22.97 ID:fltZOasb0
- ちんちん小袴
夜も更け候──
お静まれ、姫君──
やとんとん
その意味は「我々はちんちん小袴である──夜遅い──眠りなさい、高貴な貴族の
かわいい人よ」
この言葉はとても礼儀正しいが、すぐにこの小さな男達は彼女を残酷にからかって
いるだけなのがわかった。彼らもまた醜い顔を作って彼女へ向けた。
彼女はいくつかを捕まえようと試みたが、辺りをとても素早く跳ね回るので、それは
できなかった。それから追い払おうとしたが、彼らは出て行かず、彼女を笑いながら
「ちんちん小袴……」と歌うのをやめなかった。そして、これが小さな妖精だと
分かると、叫ぶことさえできないほど非常な恐怖の虜となった。彼らは朝になる
まで彼女の回りで踊り続けた──それから全員が突然消え去った。
彼女は何が起こったか、誰かに告げるのを恥じた──彼女は戦士の妻なので、
どんなに怯えているのか、誰にも知られたくなかった。次の晩、ふたたび小さな
男達が来て踊り、その次の晩も、毎晩やって来た──いつも同じ時間、昔の日本で
使われていた「丑の刻」と呼ばれる、我々の時間にしておよそ午前二時頃だ。
しまいには寝不足と恐怖によって、とても具合が悪くなった。しかし、小さな男達は
彼女をひとりにしようとはしなかった。夫が帰宅し、彼女が病で寝込んでいるのが
分かると、たいへん心配した。はじめ彼女は病の原因を話せば、笑われるのでは
ないかと恐れた。しかし彼はとても親切でとても穏やかに彼女を説得したので、
しばらくして毎晩何が起こったかを話した。彼は全く笑わなかったが、一時非常に
真剣な顔をした。それから訊ねた──
「そいつらは何時頃やって来るのだ。」彼女は答えた──「いつも同じ時刻──
丑の刻でございます。」
「よく分かった」夫は言った──「今晩、わしが隠れて見てやろう。恐れることはない。」
そのように、その晩戦士は寝室の押し入れに身を隠し、襖の狭いすき間から
覗き続けた。
彼は「丑の刻」まで待ちつつ覗いたが、その時突然、小さな男達が敷物を通って
やって来て、踊りと歌を始めた──
- 16 :ちんちん小袴5 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:49:51.87 ID:fltZOasb0
- ちんちん小袴、
夜も更け候う……
彼らはとても珍妙な外見をし、なんとも滑稽なやり方で踊ったので、戦士は
笑いをこらえるのに苦労した。しかし彼の若い妻の怯えた顔が見えると、日本の
ほとんどの幽霊や妖怪は刀を恐れるのを思い出し、刀を抜いて、押し入れから
跳び出して、小さな踊り手達をなぎ払った。たちまち彼らの全ては姿を変えた
──何だと思う?
つまようじ!
小さな戦士達はもういなかった──たくさんの爪楊枝が敷物の上に散らばって
いるだけだった。
若い妻は爪楊枝を捨てるのを怠け過ぎて、毎日、新しい爪楊枝を使った後、
それを目につかなくするため、床の上の敷物の間に刺して落としたのだろう。
そのため敷物を手入れする小さな妖精達が怒って彼女を責め苛んだのだ。
夫が彼女を叱ると、たいへん恥じ入り、どうしたら良いのか分からなくなった。
使用人が呼ばれ、爪楊枝は焼き捨てられた。その後、小さな男達がふたたび
帰って来ることは無かった。
- 17 :ちんちん小袴6 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 11:51:48.58 ID:fltZOasb0
- 無精な女の子について伝えられた話が更に有る。その子はスモモを
食べた後で、種を敷物の間に隠す習慣だった。長い間見付からずに
こんなことができた。しまいに妖精達の怒りを買い懲らしめられた。
毎晩、小さな小さな女達が──全員が長い袖の付いた鮮やかな赤い
着物を着て──同じ時間に床から湧き出してきて、踊り、彼女にしかめっ面
を向けて眠りを妨げた。ある晩母親が身を起こして伺うと、それが見え、
叩いた──すると彼女達全員がスモモの種に姿を変えた。そうして小さな
女の子のいたずらは見付かった。その後、彼女は非常に立派な少女と
なった、確実に。
- 18 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/15(金) 12:11:24.77 ID:fltZOasb0
- Japanese Fairy Tale SeriesのChin Chin Kobakamaという話でした。
このシリーズは布に質感を似せた和紙に印刷された絵本で、
絵もなかなか面白いです。でも、この「ちんちん小袴」では、イラスト
と前書きでネタばれしているような・・・
敷物はmatsの訳で、この話では畳の事ですね、畳と翻訳しても
良かったのですが、文中にJapaneseという単語がいくつか有ったので
外国人視点で見るなら、敷物と訳した方が良いだろうと思いこうして
います。
ところでこの絵本、当時でも高価だったのではと想像できますが、
現在の古書市場でも40万円以上します。ネットを検索すると、
PDFファイルや、画像を掲載しているサイトが複数ヒットします。
そちらで楽しみましょうか…
- 19 :若返りの泉1 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:05:52.95 ID:8gfWneok0
- 若返りの泉
むかしむかし、日本の山々の間のどこかに、貧しい樵《きこり》と
その妻が住んでいた。ふたりはとても年老いていたが、子供が
無かった。夫は毎日ひとりで森へ木を切りに行き、妻は家で座って
機を織った。
ある日老いた男は、とある種類の木を捜しに普段よりも森の奥へ
進んで行くと、いつの間にか自分が今までに見たことの無い小さな
泉の端にいるのが分かった。水は不思議なほど冷たく澄みきって
おり、またその日は暑い中を苦労して歩いたので喉が渇いていた。
そうして大きな麦藁帽子を脱ぎ、膝をついて長いこと飲み続けた。
- 20 :若返りの泉2 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:07:46.96 ID:8gfWneok0
- その水は極めて脅威的な方法で彼を元気付けたように見えた。
それから泉に自分の顔を見付けて、後ずさった。間違い無く自分の
顔ではあるが、家の銅鏡で見慣れたのとは全く違っていた。それは
とても若い男の顔であった。彼は自分の目が信じられなかった。
ちょっと前に綺麗にはげ上がった頭に両手をのせて、いつも持ち歩いて
いる小さな青い手拭いで拭いてみた。ところが今ではふさふさとした
黒い髪でおおわれていた。また、顔は皺のことごとくが消え去り、
少年のようにすべすべになっていた。同時に自分に新しい力が
みなぎっているのを発見した。寄る年波で長い間萎え衰えた手足が、
今では引き締まった若い筋肉で固くしなやかになった驚きで目を
みはった。知らぬ間に若返りの泉を飲み、それにより彼は一変したのだ。
- 21 :若返りの泉3 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:09:47.13 ID:8gfWneok0
- 最初に高く跳び上がって大きな喜びの声を上げ──それから
今までの人生でかつて走ったよりも早い速度で家へ走った 。彼が
家に入ると妻は怯えてしまった──彼を知らない人だと思い込み、
不思議な出来事を話しても、一度に信じてはくれなかった。しかし
長いことかかって、今目の前にいる若い男が本当に彼女の夫だと
説得できて、泉の場所を話し、一緒に行こうと誘った。
それに対して彼女は言った──「あんたは、そんな男前で、そんなに
若くなりなさっては、こんなお婆を愛し続けられません──そんなら
私もすぐに、なんぼかその水を飲まななりません。だけど同じ時間に
家を空けてしまっては、私達双方の為になりません。私が行っている間、
ここで待っていて下さいませんか。」そして彼女は木々の間を全て
ひとりで走った。
彼女は泉を見付け、膝をついて飲みはじめた。ああ何て冷たくて
気持ちがいいんだろう、この水は。彼女は飲んで飲んで飲んで、息を
継ぐ為だけに休んで、また繰り返した。
- 22 :若返りの泉4 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:10:24.36 ID:8gfWneok0
- 夫はもどかしげに彼女を待った──彼は可愛らしい細身の娘に
なって帰って来る彼女に会えると期待していた。しかし彼女はいつ
までたっても戻って来なかった。彼は心配になって、家の戸締まりを
して、彼女を捜しに出かけた。
泉に着いても彼女は見付からなかった。ちょうど彼が帰ろうとした
所で、泉のそばの高い草の間から、小さな泣き声が聞こえた。そこを
調べてみると、妻の着物と赤ん坊が見付かった──とても小さな
赤ん坊で、おそらく六ヶ月くらいの歳だろう。
お婆さんは不思議な水をあまりにもたくさん飲み過ぎたために、
若い頃を越えて言葉を話せない幼児の時代に遠く後退するよう自身を
飲み込んだ。
彼はその赤ん坊を両手で抱き上げた。その子は悲しく不思議そうに
彼を見た。彼はその子を家まで運んだ──奇妙な哀しみの思いを──
ぶつぶつ言い聞かせながら。
- 23 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:18:39.69 ID:8gfWneok0
- Japanese Fairy Tale SeriesのThe Fountain of Youthでした。
「お婆」は沖縄の人ならオバアと読みますかね、他の人なら
オババでしょうか。出雲ではおばあさんと言う所をオババと
今でもよく言うので、お婆さんとはしませんでした。
お婆さんのセリフは出雲弁にしたかったのですが、読みづらい
だろうと思い程々に出雲風にしておきました。
鋭い人ならお婆さんが帰って来ないところでオチが読めたかも
しれませんねw
- 24 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 08:59:49.22 ID:vqaVLv9o0
- >>17のスモモを梅干しに訂正します。
plumという単語を調べ直してみると、
plum【名刺】スモモ、西洋スモモ、日本の梅、干しぶどう
という事でした。
- 25 :因果話1 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:02:23.54 ID:vqaVLv9o0
- 因果話
※文字どおり因果の話。因果は悪い宿縁や過去の存在の状態で
誤った関わりによる悪い結果に対する日本の仏教用語。おそらく
この奇妙な説話の題名は、死者が犠牲者の過去の暮らしの中の
悪しき行いとのかかわり合いの結果においてのみ、生者を害する
力を持つという仏教の教えの説明に最適なのだろう。題名と説話の
双方とも、百物語という題名の怪談集で見付かるだろう。
- 26 :因果話2 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:04:58.39 ID:vqaVLv9o0
- 大名の妻が臨終を向かえていたが、彼女は死にゆくことを
知っていた。文政十年の初秋から寝床を離れることができ
なかった。今は文政十二年の四月──西暦一八二九年、
桜の木が花を咲かせていた。彼女は庭の桜の木と、その
春の喜びに思いを巡らせた。子供達のことを思った。夫の
様々な側室に思いを寄せた──とりわけ十九歳の雪子御前。
「愛する妻よ」大名が話しかけた「そなたは三年の長きに渡って、
とても重く苦しんできた。我々はそなたの為になることは出来る
全てをしてきた──昼夜お前のそばで見守り、祈り、しばし
断食をした。愛情のこもった看病にもかかわらず、我々の
最高の医術を尽くしたにもかかわらず、今そなたの命の終りは
遠くないように見える。そなたの悲しみより、お釈迦様がとても
正しく名付けた「この世の火宅」を旅立つそなたを見送る我々の
悲しみが間違い無く大きいであろう。わしは、そなたの来世の
役に立つと思える法要のことごとくを──どんな費用を
かけても──実施させるつもりで、我々の皆はそなたが
暗闇で迷うこと無く、 速やかに浄土に入り、仏の位に到達
できるように休み無く祈ろう。」
彼女を優しく撫でながら細心のいたわりを込めて話した。
それから、まぶたを閉じ、彼女は虫のようにかぼそい声で
答えた──
「かたじけのうございます──何よりも感謝いたします──
あなたの親切なお言葉……そうです、あなたのおっしゃる通り、
三年もの長きに渡り病に臥して、できる限りの看病と愛情の
こもった治療をいただきましたのに……まあ、どうして死を
間近に控えて正しいひとつの道から顔をそむけることが
ございましょうか……このような時に俗世の心配をするのは
良くないのでしょうが──最後にひとつお願いがございます
──ひとつだけ……雪子御前をここへお呼びください──
ご存知のように私はあの娘《こ》を妹のように愛しております。
この家の細事について話しておきたいのです。」
- 27 :因果話3 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:08:30.57 ID:vqaVLv9o0
- 主人の合図に従って、雪子が呼ばれ寝所の傍《そば》に正座
して座った。大名の妻は目を開き雪子を見つめて話した──
「ああ、雪子がここに……あなたの顔が見られてどんなに嬉しい
ことか、雪子……もっとそばにおいで──あなたによく聴こえる
ような、大きな声では話せないのですもの……雪子、私は死に
ます。私の望みは、私達の大切な旦那様の全てのことをあなたが
誠実に行ってくれること──私が逝ってからの勤めは、あなたに
引き継いでほしい……あなたがいつもあの方から愛されるよう
望みます──そう、私がいただいた百倍以上に──そして、
とっても早く高い地位に登って、光栄な妻になるのです……
大切な旦那様をいつも大事にしてくださるよう切にお願いします。
他の女に寵愛を奪われるのは許しません……これがあなたに
言いたかったことです。可愛い雪子……よく分かりましたか。」
「ああ、いとしい奥方様、」雪子は諌《いさ》める「なりません、
お願いでございます、どうしてそのようなおかしな事をおっしゃる
のでしょう、よくご存知のように私は貧しく卑しい身分の者で
ございます──いつか私達の旦那様の妻になるような、
大それた望みをどうして持てるのでしょうか。」
「いえ、いえ」妻がかすれ声で返す──「今は建前を言う時
ではありません。お互いに本音だけで語り合いましょう。私が
死んでから、あなたはきっと高い地位に昇るでしょう、今私が
請け合いますから、私達の旦那様の妻となるよう重ねて
お願いします──そう、これが私の望み、雪子、私が仏と
なることより、もっと望んでいます……ああ、もう少しで
忘れるところでした──あなたにしてほしいことが有ります、
雪子。あなたも知っての通り、一昨年《おととし》大和の
吉野山から持ってきた八重桜[1]が庭に有ります。今それが
満開だと聞いています──死ぬまでの少しの間、お花見
でもしていたいのです──死ぬ前にあの木を見ておかなくては
なりません。今あなたに庭まで連れて行ってほしいのです
──すぐに、雪子──私が見られる内に……そう、あなたの
背中で、雪子──私をおぶっておくれ……」
- 28 :因果話4 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:11:38.79 ID:vqaVLv9o0
- こうして求めているうちに、彼女の声は次第に明瞭に、力強く
なっていった──まるで望みの強烈さが、彼女に新しい
生命力を与えたかのように。それから彼女は急にわっと泣き
出した。雪子はどうしたら良いか分からず、正座のまま動けず
にいたが、殿様が同意して頷いた。
「それがこの世の最後の望みだ、」彼が言った。「こいつは
いつも桜の花を愛していて、大和木に花が咲くのを随分と
見たがっていたのを知っている。おいで、可愛い雪子、その
思いを叶えてやるといい。」
乳母が子供にするかのように、すがりつけるよう背中を向け、
雪子は肩を差し出して言った──
「奥方様、支度が整いました、どうか具合の良いお世話が
できるやり方をおっしゃってください。」
「では、こうして」──瀕死の女は言葉を返し、雪子の両肩に
まとわり付き、ほとんど人間離れした努力で自身を引き上げた。
しかし、彼女はまっすぐ立ち上がりながら、素早く痩せた両手を
両肩の上から下ろし、着物の下へ滑らせ、娘の両乳房を
掴《つか》むと、いやらしい笑い声をほとばしらせた。
「望みは叶った」彼女は叫んだ──「桜の花[2]への望みは
叶った──だけど庭の桜の花じゃあない……望みを叶える
までは死にきれなかった。今それは叶った──おお、
嬉しや嬉しや。」
そしてこの言葉と共に、しゃがんだ娘の上に前のめりに
なって死んだ。
- 29 :因果話5 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:13:20.28 ID:vqaVLv9o0
- お付きの者達が一度体を持ち上げて、雪子の肩から寝床へ
横たえようとした。だが──奇妙なことに──これが見た目ほど
簡単にできることではなかった。冷たい両手それ自体が不可解な
やり方で──急に肉と一体化して成長したかのように──娘の
乳房に張り付いていた。雪子は恐怖と苦痛と共に気を失った。
医者達が呼ばれた。彼らは何が起こったか分からなかった。
通常の手法では死んだ女の手を、被害にあった彼女の体から
離せなかった──それは余りにもぴったりくっついていたので、
どんなに頑張って取り除いても血を流さずには済まなかった。
これは指で握っているのではなく、手のひらの肉それ自体が
何か説明できない具合に乳房の肉と結合していたからだ。
- 30 :因果話6 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:15:55.56 ID:vqaVLv9o0
- その頃江戸で最も医術に優れていたのは異国人──
オランダ人船医であった。彼を呼び寄せる決定がなされた。注意
深く診察した後で彼が言うには、この状態は自分には理解
できないが、すぐに雪子を助けるには、死体から両手を切るしか
できることは無い。乳房からそれを切り離すのは危険だろうと
名言した。彼の忠告は受け入れられ、両手は手首で切断された。
だがそれはぴったりくっついたまま残り、すぐに暗い色になり
干からびた──まるで死んでから長い時を経た人の手のように。
- 31 :因果話7 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:17:16.67 ID:vqaVLv9o0
- これはまだ恐怖の始まりに過ぎなかった。
干からびて血の気がないにもかかわらず、この手は死んでは
いないように見えた。それらは周期をもって蠢《うごめ》くのだった
──密やかに、まるで巨大で灰色な蜘蛛のように。以来、夜ごと
──いつも丑の刻[3]に始まり──握り、圧迫し、苦しめていった。
寅の刻を向かえてのみ苦痛は止むのであった。
- 32 :因果話8 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:19:03.12 ID:vqaVLv9o0
- 雪子は髪を切り、托鉢の尼僧となって──脱雪の法名を得た。
彼女は死んだ女主人の戒名──妙高院殿知山涼婦大姉──
を担《にな》った位牌(慰霊の銘板)を作り、流浪の旅の間いつも
これを携え、毎日その前に伏して死者に許しを乞い、嫉妬深い
魂が安らぎを得られるよう、仏教の法要を行った。しかし
そのような苦悩をもたらした悪い宿縁を、すぐには解消させられ
なかった。十七年以上にわたって、毎晩丑の刻になると、両手は
彼女を苦しめずにはおかなかった──彼女が、ある晩立ち寄った
下野の国河内郡田中村の野口田五左衛ー門の家で 、最後に
自分の話を語った、そこの人達の証言による。それは弘和三年
(一八四六年)のことである。それ以後の更なる彼女については、
これまで聞こえていない。
- 33 :因果話9 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:20:18.28 ID:vqaVLv9o0
- [1]八重桜、八重の桜、二重に花をつける日本の桜の木の品種。
[2]日本の詩や諺では、女性の肉体的美しさを桜の花と比較
する一方、かよわい貞淑な美しさを梅の花と比較する表現方法。
[3]日本の古代の時間で、丑の刻は幽霊達の特別な時間で
あった。それは午前二時に始まり、午前四時まで続く──古い
日本の時間は現代の時間の二倍の長さがあったからだ。寅の
刻は午前四時に始まる。
- 34 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/09/01(月) 09:36:34.30 ID:vqaVLv9o0
- In Ghostry Japan(霊的日本にて)よりIngwa-Banashiでした。
私が初めてこの話を読んだのは社会人になってから買った
田代三千稔訳の本でした。
当時は嫉妬の恐ろしさに鳥肌が立ったものでした。
今、改めて自分で翻訳してみると、怪異の原因は嫉妬ではなく、
雪子への異常な愛情ではないかと思えてきました。
奥方は死んでからも、ずっと雪子と一緒にいられて幸せだった
のだろうなと、そう思うと・・・恐ろしさに鳥肌が立ちます。
托鉢という言葉は解説不要ですよね?
原文ではmendicantという単語になっています。
托鉢の他に、乞食や物乞いの意味が有ります。
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