怪談:妖しい物の話と研究


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奇談
1 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:16:03.69 ID:XRRvBaIb0
【出版依頼】
【著者】ラフカディオ・ハーン
【翻訳編集】小林幸治
【予定価格】100円

小泉八雲の「怪談」に収録されていない、霊的な話や不思議な話を収録して
電子書籍にします。

話の画像はいつでも募集してます。謝礼はカラー2000円、モノクロ1000円、
著作権は絵師に残り、私に利用権を与え、著作権者は他所で利用しても良い
という方向です。

2015/03/09修正と追記
内容を追加した改訂版の無料アップデートはKindleの規約上不可能であると分かりました
14話程度で1冊作り3巻の電子書籍にする予定です
最後に全話まとめて1冊作り、計4冊にしようかと思います

135 :団子をなくしたお婆さん1 ◆YAKUMOZcw.:2016/08/02(火) 10:33:04.21 ID:EwduH00s0
団子をなくしたお婆さん

 遠い遠い昔、笑ってお米の粉で団子を作るのが
好きな、おかしなお婆さんがいた。
 ある日、夕食のために幾つかの団子を用意して
いるとその内のひとつを落としてしまい、それは
転がって小さな台所の土間の穴に入って消えた。
お婆さんはそれをつかもうと穴に向かって手を下ろ
すと、突然地面が開いてお婆さんは中に落ちた。
 かなりの距離を落下したが少しも怪我をしないで、
再び足で起き上がると、まるで彼女の家の前のよう
な道の上に立っているのを見た。下の方はかなり明
るく、たくさんの田んぼが見えたが誰もいなかった。
どうしてこうなったのかは言い様が無い。しかしそれ
は、お婆さんが異世界へ落ちたように見える。
 落ちた道はひどい坂になっていたので、いたずら
に団子をさがしたあとで、坂道を転がり落ちて遠く
へ行ったのに違いないと思った。彼女は叫んで道を
駆け降りた──
「団子や、団子──わたしの団子はどこじゃー」
 しばらくすると道端に石地蔵が見えたので話しか
けた──
──「お地蔵様わたしの団子を見掛けませんでしたか」
 地蔵の答えは──
──「ああ私のそばを団子が転がって道をくだるの
を見ましたよ。けれどあんまり先の方には行かない方が
よろしいですよ、下の方には邪悪な人食い鬼が住んで
いますから。」
 しかしお婆さんはただ笑って、さらに道を叫び
ながら走って下った──「団子や、団子──わたし
の団子はどこじゃー」そして別の地蔵の像まで
来て訊ねた──
──「親切なお地蔵様、わたしの団子を見掛けませんでしたか」
 そして地蔵は言った──
──「ああ少し前にあなたの団子が行くのを見ま
したよ。けれど、もっと先へ走るべきではありませ
んよ、下の方には邪悪な人食い鬼がいますから。」
 しかしただ笑って走って、なおも叫んだ──「団子
や、団子──わたしの団子はどこじゃー」
 そして三番目の地蔵の元に来て訊ねた──
──「愛しいお地蔵様、わたしの団子を見掛けま
せんでしたか」
 しかし地蔵は言った──
──「今は団子の話をしないでください。こちらに
鬼が来ました。ここでわたしの袖の影にしゃがんで、
音を立てないでください。」

136 :団子をなくしたお婆さん2 ◆YAKUMOZcw.:2016/08/02(火) 10:39:04.53 ID:EwduH00s0
 間もなく鬼がやって来て、ごく近くに止まって地蔵
にお辞儀をして言った──
──「こんにちは地蔵さん。」
 地蔵も非常に丁寧にこんにちはと言った。
 それから鬼は、突然うさんくさいやり方で空気を二三
回嗅いで叫び出した──「地蔵さん地蔵さん、どこ
かで人の臭いがしますぜ──違いますか。」
──「ああっ」地蔵が言う──「たぶん勘違いでしょう。」
──「いやいや」再び空気を嗅いでから鬼が言っ
た。「あっしには人の臭いがしますぜ。」
 そうこうするうちにお婆さんは笑いがこらえ
きれなくなった。
「てへへ」──すると鬼はすぐさま地蔵の袖の影へ
大きな毛深い手を伸ばして彼女を引っ張り出した。
──まだ笑っている「てへへ」
──「あっはっは」鬼は高笑い。
 それから地蔵が言った。
──「この人の良いお婆さんをどうするつもりですか。
傷つけるんじゃありませんよ。」
──「そのつもりです。」と鬼は言った。「でも連れて
帰ってあっしらの飯を作らせましょう。」
──「てへへ」とお婆さんが笑った。
──「たいへんよろしい」と地蔵は言い──「けれど
本当にやさしくしなくてはなりませんよ。そうでなければ
わたしはとっても怒りますからね。」
──「まったく傷つけるつもりはありません」と鬼は
約束して「毎日ちょっとしたあっしらの仕事をさせる
だけですよ。さようなら地蔵さん。」
 それから鬼は道沿いに遠くの広くて深い川まで
連れて来ると、そこには1艘の舟があった。彼女を
舟に乗せて川向こうの家へ連れて行った。それは
とても大きな家であった。すぐに台所へ案内すると
自分と一緒に暮らす他の鬼のいくらかの食事を料理
しろと言った。そして小さな木のしゃもじを渡して言った──
──「あんたが釜に入れる米はいつでも1粒だけに
しなくちゃならね、それでこのしゃもじで水の中の米
1粒をかき混ぜると、その米粒は釜一杯になるまで
増え続けるぜ。」

137 :団子をなくしたお婆さん3 ◆YAKUMOZcw.:2016/08/02(火) 10:45:13.03 ID:EwduH00s0
 そうしてお婆さんが鬼の言う通りきっちり米粒1
つを釜に入れてしゃもじでかき混ぜ始めると、かき
回す度に1粒が2粒に──それから4粒──そして
8粒──それから十六、三十二、六十四、さらに
もっと。しゃもじを動かす度に米は大量に増えて、
大きな釜はほんの数分でいっぱいになった。
 その後、おかしなお婆さんは長い間鬼の家で
過ごし、彼とその友達全部の食べ物を料理した。
鬼はけっして傷つけたり怖がらせたりせず、仕事は
──鬼がどんな人間が食べるよりもたくさん食べる
から、とてもとても大量の米を料理しなくてはならな
くても──魔法のしゃもじのおかげでまったく簡単
であった。
 けれども寂しくなって自分の小さな家へ帰り団子
を作りたいと、いつでも強く願うようになった。そして
ある日、鬼達みんながどこかへ出掛けた隙に逃げ
出そうと思った。
 手始めに魔法のしゃもじを取って帯の下にすべり
込ませ、それから川へ下りていった。舟がある所ま
で誰にも見られなかった。乗って押して、とても上手
く漕げたのですぐに岸から離れた。しかし川はとても
広く、鬼の全員が家へ戻った時に川幅の4分の1も
漕げていなかった。
 彼らは飯炊きも魔法のしゃもじも見つからないのに
気が付いた。すぐに川まで走って下りると、お婆さん
がとても速く漕ぎ去るのが見えた。おそらく全く舟の
無い場合には彼らは泳げない、そしておかしなお婆
さんを捕まえるには別の岸へ着く前に川の水全部を
飲み干すしか方法が無いと思った。そうして跪きとても
早く飲み始め、お婆さんが半分を渡り切る前に水が
すっかり低くなった。
 しかしお婆さんは水がとても浅くなるまで漕ぎ続け
て、鬼が飲みやめると歩いて渡った。それから櫂を
落として魔法のしゃもじを帯から取り出して鬼に向かっ
て振り、鬼の全てが吹き出すようなおかしな顔を作った。
 しかし彼らは笑った瞬間に飲んだ全ての水を吐き出
さずにいられず、そうして川は再びいっぱいになった。
鬼は渡ることができず、お婆さんは無事に向こう岸まで
渡り、できるだけ速く道を走って逃げた。再び自分の
家を見つけるまでけっして走るのをやめなかった。

138 :団子をなくしたお婆さん4 ◆YAKUMOZcw.:2016/08/02(火) 10:45:55.24 ID:EwduH00s0
 その後、彼女はいつでも好きなだけ団子が作れる
のでとても幸せであった。それにお米が作れる魔法の
しゃもじを持っている。彼女は近所や旅人に団子を売っ
て、かなり短い期間で裕福になった。

139 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2016/08/02(火) 10:57:36.51 ID:EwduH00s0
Japanese Fairy Tale Seriesの
THE OLD WOMAN WHO LOST HER DUMPLING
でした。

Japanese Fairy Tale Series(日本お伽噺シリーズ)
の中で小泉八雲の著作は全5話ありまして、下約
では有りますが、これで全ての翻訳が終わりました。

化け蜘蛛>>2-5
ちんちん小袴>>12-18 >>24
若返りの泉>>19-23
猫を描いた少年>>130-134
団子をなくしたお婆さん>>135-139



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