怪談:妖しい物の話と研究


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奇談
151 :伊藤則資の話2 ◆YAKUMOZcw.:2016/09/13(火) 22:40:13.75 ID:hA+TYjsp0
い杉と竹から成るその木立は、村を嵐から守り、また様々
な目的での材木も供給する。幹の間を通る余地の無いほど
密集して植えられた木々は、帆柱のように真っ直ぐ立ち、太
陽を遮る屋根のような外観に天辺が混ざり合う。めいめい
に屋根を葺かれた田舎の家は、植え込みの中の明るい場
所を占めその回りを建物の2倍の高さの木々が柵を形成す
る。木々の下では真っ昼間でさえいつでも薄明りで、朝や
夕方の家は半分は陰になっている。このような村のほとんど
が、およそ穏やかとは言えない第一引用を与えるが、透明で
はない暗がり、静寂の他にそれ自体が確かに持つ不思議な
魅力がある。五十や百の住居が在るかも知れないが、誰に
も会わず、見えない鳥がさえずり、たまに雄鶏が鳴き、蝉の
甲高い声の他には聞こえない。蝉でさえこの木立が薄暗く
過ぎるのが分かり微かに鳴くけれども、太陽を愛する物は
むしろ村の外側の木々を選ぶ。時たま──チャカトンチャカ
トンという──見えない折り返しが聞こえると言うのを忘れて
いたが、そのお馴染みの音は大きな緑の静寂の中ではお伽噺
の出来事に見える。静寂の理由は単に人々が家に居ない
ということだ。一部の弱った年長者を除く大人の全ては近隣
の田畑へ行き、女たちは背中で赤ん坊を運び、ほとんどの
子供はおそらく半里より少なくない道のりの最も近い学校へ
行っている。確かにこのほの暗く静まり返った村は、管子《かんし》
の書に記録された不思議な永久化のひとつを眺めるようだ──
「世界の栄養を手に入れた古代人達は何も望まず、世界は
充足していた──彼等は何もせず、全ての物は変えられた
──静寂は底知れず、人々は皆穏やかであった。」〕

……日が落ちて伊藤がそこへ着いた時には村はたいそう暗
く、夕暮れは木々の陰になって茜色を作らなかった。「さて、
ご親切なお方、」子供はこう言って、大通りに面した細い路を
指差した。「私はこの道を行かなくてはなりません。」「あなた
の家まで送ることをお許しください。」伊藤は応え、道を見るよ



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