怪談:妖しい物の話と研究


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奇談
1 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/04(月) 15:16:03.69 ID:XRRvBaIb0
【出版依頼】
【著者】ラフカディオ・ハーン
【翻訳編集】小林幸治
【予定価格】100円

小泉八雲の「怪談」に収録されていない、霊的な話や不思議な話を収録して
電子書籍にします。

話の画像はいつでも募集してます。謝礼はカラー2000円、モノクロ1000円、
著作権は絵師に残り、私に利用権を与え、著作権者は他所で利用しても良い
という方向です。

2015/03/09修正と追記
内容を追加した改訂版の無料アップデートはKindleの規約上不可能であると分かりました
14話程度で1冊作り3巻の電子書籍にする予定です
最後に全話まとめて1冊作り、計4冊にしようかと思います

19 :若返りの泉1 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:05:52.95 ID:8gfWneok0
若返りの泉

 むかしむかし、日本の山々の間のどこかに、貧しい樵《きこり》と
その妻が住んでいた。ふたりはとても年老いていたが、子供が
無かった。夫は毎日ひとりで森へ木を切りに行き、妻は家で座って
機を織った。
 ある日老いた男は、とある種類の木を捜しに普段よりも森の奥へ
進んで行くと、いつの間にか自分が今までに見たことの無い小さな
泉の端にいるのが分かった。水は不思議なほど冷たく澄みきって
おり、またその日は暑い中を苦労して歩いたので喉が渇いていた。
そうして大きな麦藁帽子を脱ぎ、膝をついて長いこと飲み続けた。

20 :若返りの泉2 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:07:46.96 ID:8gfWneok0
 その水は極めて脅威的な方法で彼を元気付けたように見えた。
それから泉に自分の顔を見付けて、後ずさった。間違い無く自分の
顔ではあるが、家の銅鏡で見慣れたのとは全く違っていた。それは
とても若い男の顔であった。彼は自分の目が信じられなかった。
ちょっと前に綺麗にはげ上がった頭に両手をのせて、いつも持ち歩いて
いる小さな青い手拭いで拭いてみた。ところが今ではふさふさとした
黒い髪でおおわれていた。また、顔は皺のことごとくが消え去り、
少年のようにすべすべになっていた。同時に自分に新しい力が
みなぎっているのを発見した。寄る年波で長い間萎え衰えた手足が、
今では引き締まった若い筋肉で固くしなやかになった驚きで目を
みはった。知らぬ間に若返りの泉を飲み、それにより彼は一変したのだ。

21 :若返りの泉3 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:09:47.13 ID:8gfWneok0
 最初に高く跳び上がって大きな喜びの声を上げ──それから
今までの人生でかつて走ったよりも早い速度で家へ走った 。彼が
家に入ると妻は怯えてしまった──彼を知らない人だと思い込み、
不思議な出来事を話しても、一度に信じてはくれなかった。しかし
長いことかかって、今目の前にいる若い男が本当に彼女の夫だと
説得できて、泉の場所を話し、一緒に行こうと誘った。
 それに対して彼女は言った──「あんたは、そんな男前で、そんなに
若くなりなさっては、こんなお婆を愛し続けられません──そんなら
私もすぐに、なんぼかその水を飲まななりません。だけど同じ時間に
家を空けてしまっては、私達双方の為になりません。私が行っている間、
ここで待っていて下さいませんか。」そして彼女は木々の間を全て
ひとりで走った。
 彼女は泉を見付け、膝をついて飲みはじめた。ああ何て冷たくて
気持ちがいいんだろう、この水は。彼女は飲んで飲んで飲んで、息を
継ぐ為だけに休んで、また繰り返した。

22 :若返りの泉4 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:10:24.36 ID:8gfWneok0
 夫はもどかしげに彼女を待った──彼は可愛らしい細身の娘に
なって帰って来る彼女に会えると期待していた。しかし彼女はいつ
までたっても戻って来なかった。彼は心配になって、家の戸締まりを
して、彼女を捜しに出かけた。
 泉に着いても彼女は見付からなかった。ちょうど彼が帰ろうとした
所で、泉のそばの高い草の間から、小さな泣き声が聞こえた。そこを
調べてみると、妻の着物と赤ん坊が見付かった──とても小さな
赤ん坊で、おそらく六ヶ月くらいの歳だろう。
 お婆さんは不思議な水をあまりにもたくさん飲み過ぎたために、
若い頃を越えて言葉を話せない幼児の時代に遠く後退するよう自身を
飲み込んだ。
 彼はその赤ん坊を両手で抱き上げた。その子は悲しく不思議そうに
彼を見た。彼はその子を家まで運んだ──奇妙な哀しみの思いを──
ぶつぶつ言い聞かせながら。

23 :小林 ◆YAKUMOZcw.:2014/08/21(木) 19:18:39.69 ID:8gfWneok0
Japanese Fairy Tale SeriesのThe Fountain of Youthでした。

「お婆」は沖縄の人ならオバアと読みますかね、他の人なら
オババでしょうか。出雲ではおばあさんと言う所をオババと
今でもよく言うので、お婆さんとはしませんでした。

お婆さんのセリフは出雲弁にしたかったのですが、読みづらい
だろうと思い程々に出雲風にしておきました。

鋭い人ならお婆さんが帰って来ないところでオチが読めたかも
しれませんねw



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