怪談:妖しい物の話と研究


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奇談
211 :弘法大師の書3 ◆YAKUMOZcw.:2021/04/08(木) 23:38:55.50 ID:XHiqwpwH0
 さて、弘法大師はその頃独り川辺で瞑想をする習慣があり、ある日そうして


 しかし弘法大師自身かつて天皇が住まう御所の門、大手門の名前を描いた
額の大の文字の側に点を書き忘れたことが有る。そして京都の天皇がどうして
文字の側に点を打たなかったのか訊ねると弘法大師は答えた「忘れていました
が、今から打ちましょう。」それから天皇は額が既に門の高い所に置かれていた
ので、はしごを持ってくるよう命じた。けれど弘法大師は門の前の舗道に立って
無造作に額へ筆を投げると、そうして投げられた筆は極めて見事に点を打って
手元に戻って来た。
 また弘法大師は京都の光化門と呼ばれる天皇の御所の門の額を描いた。さて、
その門の近くに木百枝《きのももえ》という 名の男が住んでいて、弘法大師の書
の文字のひとつを指差し冷やかして言った「あら、あれはふんぞり返った力士の
ようだ。」その夜、百枝は寝床に力士がやって来て彼の上に飛び乗り両の拳で殴
られる夢を見た。強く打たれた痛みで叫び目が醒めると宙に昇る力士が見え、前
に笑った書の文字に姿を変えて門の上の額に戻った。
 そして偉大な技量で有名な小野茂徳《おのもとく》という別の書家がいて、弘法
大師の書いた朱郭門の額のいくつかの文字を笑い、朱の文字を指して言った「朱
がまるで米のようだ。」その夜、冷やかした文字が男の人になる夢を見て、その男
が彼の上に倒れこんで跳び上がったり下がったりして「見たか、我は弘法大師の
使いだ。」と言いながら顔を何度も何度も──まるで杵を上下に動かして米を叩い
て精米する米つきのように──打った。目が醒めると、ひどく踏みつけられたかの
ように血を流し怪我をしている自分に気が付いた。
 弘法大師の死から随分たってから、御所の2つの門──美しい幸せの門の美福
門と素晴らしく偉大な門の光化門──の彼が書いた名前がほとんど消えているの
が分かった。そして額を復元するよう天皇は行成という名の大納言[1]に命じた。し
かし行成は他の人達に何が起こったかを思うと天皇の命令を行うのが怖く、弘法大
師の罰を恐れ、お供えをして何か許しの印《しるし》をもらえるよう祈願した。その夜、
弘法大師が夢に現れて優しく微笑み言った「陛下のお望みを叶える時に恐れては



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